ド・モアブルの定理を用いた三角関数の三倍角公式の導出
📂複素解析ド・モアブルの定理を用いた三角関数の三倍角公式の導出
公式
sin3θ=3sinθ−4sin3θcos3θ=4cos3θ−3cosθ
説明
既存の変形公式は、普通三角関数の加法定理を何度も使用して得られるものだった。
例えば二倍角公式は、sin(a+b)=sinacosb+sinbcosa に b=a を代入して sin(a+a)=sin2a=2sinacosa を得る式だ。もちろん、この方法で三倍角、四倍角の公式を導出すること自体に問題はない。しかし、複素解析を使えば、もっとスマートにこれらの公式を導出できる。
変形公式そのものよりも、導出過程自体が役に立つので、必ず覚えておこう。
導出
ド・モアブルの定理: z=rcisθ ならば zn=rncisnθ
ド・モアブルの定理によると、r=1 とすると
(cos3θ+isin3θ)=cis3θ=z3=(cosθ+isinθ)3
この等式が成り立つための必要十分条件は、両辺の実部と虚部がそれぞれ等しいことだ。右辺を展開するために、二項定理を使用すると
(cos3θ+isin3θ)====(cosθ+isinθ)3cos3θ+i3cos2θsinθ−3cosθsin2θ−isin3θ(cos3θ−3cosθsin2θ)+i(3cos2θsinθ−sin3θ)(4cos3θ−3cosθ)+i(3sinθ−4sin3θ)
即ち
sin3θ=3sinθ−4sin3θcos3θ=4cos3θ−3cosθ
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応用
二項定理を使用するアイデアからもわかる通り、特に三倍角に限定された導出法ではない。自然数に対しても拡張することができ、級数で表して一般的な公式を得ることも可能だろう。また、導出過程を逆にたどってみれば、高次の三角関数項を複数の項に分割できることがわかる。