測度論によって定義される分布の収束
📂確率論測度論によって定義される分布の収束
定義
距離空間 S の ボレルシグマ場 S:=B(S) に関して 可測空間 (S,S) を定義しよう。
確率空間 (Ω,F,P) で定義された 確率変数 X と 確率過程 {Xn}n∈N が n→∞ のとき、すべての f∈Cb(S) に対して以下を満たす場合、X は分布収束するconverge in distributionと言い、Xn→DX と示される。
∫Ωf(Xn)dP→∫Ωf(X)dP
- Cb(S) は、S で定義される有界連続関数の集合を表す。
Cb(S):={f:S→R∣f is bounded and continuous}
定理
- [1]: (S,S) で定義された 確率測度の 列 {Pn}n∈N がすべての ボレル集合 B∈B(R) に対して
Pn(X−1(B)):=P(Xn−1(B))
を満たすように定義されている場合、次のことが成立する。
Xn→DX⟺Pn→WP
- 2: Xn→DX と、すべての {Xn} のサブシーケンス {Xn′}⊂{Xn} が Xn′′→DX を満たす {Xn′} のサブシーケンス {Xn′′}⊂{Xn′} を持つことは同値である。数式で再び書くと、次のようになる。
Xn→DX⟺∀{Xn′}⊂{Xn},∃{Xn′′}⊂{Xn′}:Xn′′→DX
- [3] 連続写像定理: 可測関数 h:(S,S)→(S′,S′) について、h が連続である点の集合 Ch、言い換えると Ch:={x∈S:h is continuous at x} を定義しよう。もしXn→DX かつ P(X∈Ch)=1 なら h(Xn)→Dh(X) である。数式で示すと、次のようになる。
Xn→DX∧P(X∈Ch)=1⟹h(Xn)→Dh(X)
説明
- [1]: 定理で紹介したように、このように定義された Pn は誘導された確率測度induced Probability measureと呼ばれる。確率 ‘変数’の収束と、Pn→WP すなわち確率 ‘測度’の収束と区別されることが重要である。
- [3]: 連続写像定理は、実際には確率収束やほぼ確実に収束に対しても一般化可能である。h も関数であり、確率変数も関数である点から、合成関数 h∘X の使用が自然に考えられるべきである。A∈S′ に対して、次の式が意味を成すかどうかを考え、納得する過程が必要である。
P(h(X)−1(A))=P(X∈h−1(A))
すべての f∈Cb(S) において分布が同じであるという表記は =D を使うこともある。その定義は、すべての A∈S′ と連続関数 h:S→S′ に対して次のようである。
h(X)=Dh(Y)⟺defP(h(X)−1(A))=P(h(Y)−1(A))
再び収束の表現を考えると、次のようになる。
h(Xn)→Dh(X)⟺P(h(Xn)−1(A))→P(h(X)−1(A))
証明
[1]
すべての f∈Cb(S) に対して
Pn→WP⟺⟺⟺∫SfdPn→∫SfdP∫Ωf(Xn)dP→∫Ωf(X)dPXn→DX
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(⟹) Xn→DX が成立しない場合
∫Ωf(Xn)dP→∫Ωf(X)dP
f∈Cb(S) が存在すると仮定する。つまり、
∫Ωf(Xn′)dP−∫Ωf(X)dP>ε
を満たす ε>0 とサブシーケンスのインデックス {n′} が存在すると仮定するのだ。しかし、これは
∫Ωf(Xn′′)dP→∫Ωf(X)dP
を満たすサブシーケンスのインデックスのサブシーケンス {n′′} が常に存在するため矛盾である。
(⟸) {n′′}={n} とすると、自明に成立する。
■
[3]
PX を X から誘導された確率測度、すなわち PX(A):=P(X−1(A))=P(X∈A) としよう。
h−1(B)⊂h−1(B)∪Chc
S′ のすべての閉集合 B に対して、上記の包含関係が成立する。任意の x∈h−1(B) を考えると、h が連続部分に対して閉包を保持して h−1(B) を含み、連続でない部分の逆像は Chc を含むからである。閉包 h−1(B) は S で閉集合であるので
=====≤n→∞limsupP(h(Xn)∈B)n→∞limsupP(Xn∈h−1(B))n→∞limsupPX(h(Xn)−1(B))n→∞limsupPX([Xn−1∘h−1](B))n→∞limsupPX(Xn−1(h−1(B)))n→∞limsupPn(h−1(B))n→∞limsupPn(h−1(B))
ポートマントー定理: 空間 S が 距離空間 (S,ρ) でありながら 可測空間 (S,B(S)) でもあるとしよう。次のすべては同値である。
- (1): Pn→WP
- (2): すべての有界な、一様連続関数 f に対して ∫SfdPn→∫SfdP
- (3): すべての閉集合 F に対して n→∞limsupPn(F)≤P(F)
- (4): すべての開集合 G に対して P(G)≤n→∞liminfPn(G)
- (5): P(∂A)=0 であるすべての A に対して n→∞limPn(A)=P(A)
[1]に従って Xn→DX であれば Pn→WPX であり、ポートマントー定理の (1)⟹(3) と仮定 PX(X∈Chc)=0 によって
n→∞limsupPX(h(Xn)−1(B))≤≤≤≤≤≤≤n→∞limsupPn(h−1(B))PX(h−1(B))PX(h−1(B)∪Chc)PX(h−1(B))+PX(Chc)PX(h−1(B))PX(X−1(h−1(B)))PX((h(X))−1(B))
同じ方法で PX((h(X))−1(B))≤n→∞liminfPX(h(Xn)−1(B)) を示せば
n→∞limPX(h(Xn)−1(B))=PX((h(X))−1(B))
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参考文献
更新情報
- 2023年8月19日、リュデシクによる、定理 [1] ステートメントの誤字修正(Pn(A):=P(Xn−1(A)) → Pn(X−1(B)):=P(Xn−1(B)))