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空集合の公理 📂集合論

空集合の公理

公理 1

$$ \exists X \forall x \left( \lnot \left( x \in X \right) \right) $$ 何の要素も持たない集合 $X$ が存在し、この集合 $X$ を空集合と定義する。

説明

空集合は一般に $\emptyset$ のように表記される。一方で空集合は、要素の数が $0$ の集合としても見ることができ、このように要素の数で定義できる集合には以下のようなものがある:

  1. 単元素集合:要素の数がちょうど一つの集合を単元素集合という。
  2. 有限集合:集合の要素の数が $\mathbb{N}$ に属している場合、有限集合という。
  3. 無限集合:空集合でも有限集合でもない場合、無限集合という。

ここで有限集合、無限集合の定義は少し雑だが、後で厳密に再定義される

注意すべき点は、単元素集合 $\left\{ x \right\}$ はやはり集合であり、$x$ は $\left\{ x \right\}$ の要素として明らかに異なるものであるということだ。さらに言えば、実際の現代数学では$x := \left\{ x \right\}$ のような定義さえ許されない

空集合の公理と空集合の定義を区別することは言葉通り、それら二つが異なるからである。空集合自体は空集合の公理にかかわらず定義はできる。しかし、実際に存在しているかは別問題である。空集合が存在することは直感的に理解しているが、単なる定義ではそのことを保証できない。これは解析学での完備性公理に似ている。

空集合の存在が当たり前でない理由は集合の定義を考えればわかるかもしれない。私たちは集合を直感または思考の対象として、互いに明確に区別されるオブジェクトの集まりとしたし、集合に属するオブジェクトを要素とした。しかし、この定義によれば空集合は「区別される個体」をまったく持たないべきなのに、集めるオブジェクトが一切ないにもかかわらず集まりがあるということは明らかに奇妙である。それにもかかわらず、私たち人間は「不存在の存在」についてあまりにもよく知っているため、空集合を扱うためにこうした公理を追加することになる。

このような当たり前でないことを理解したり、共感したりすることとは無関係に、空集合の存在は他の公理から導出されることがある。公理は少なければ少ないほど良いため、通常は教科書で空集合の公理は省略される傾向にある。


  1. 李興天 訳, You-Feng Lin. (2011). 集合論(Set Theory: An Intuitive Approach): p75. ↩︎