定義 1
確率空間 $( \Omega , \mathcal{F} , P)$ が与えられているとしよう。確率変数 $X$ と $t \in \mathbb{R}$ について次のように定義された $\varphi_{X} (t)$ を $X$ の特性関数characteristic functionという。 $$ \varphi_{X} (t) := E \left( e^{i t X} \right) = \int_{\mathbb{R}} e^{it x} f_{X} (x) dx $$
- まだ測度論を学んでいなければ、確率空間という言葉は無視しても構わない。
説明
確率変数 $Z : = X + i Y$ は2つの確率変数 $X, Y : \Omega \to \mathbb{R}$ について次のような性質を持つように定義される。 $$ \int Z dP = \int X dP + i \int Y dP $$ すると特性関数は、その期待値表現とオイラーの公式に従って $$ \begin{align*} \varphi_{X} (t) =& E \left( e^{i t X} \right) \\ =& \int \left[ \cos(tX) + i \sin (t X) \right] dP \\ =& \int e^{it X} dP \\ =& \int \cos ( tX ) dP + i \int \sin ( t X ) dP \end{align*} $$ であり、 $e^{itX}$ は複素数としてうまく拡張されていることが確認できる。
特性関数はその形状からモーメント生成関数 $M(t) = E \left( e^{tX} \right)$ をほとんど同じだが、実際の確率論でもそれに似た用途でよく使われる。複素数が導入される点についてはあまり心配しなくてもよい。特性関数でmgfを導くのは簡単だ。 $T \in \mathbb{R}$ について $t = -i T$ とすると $$ \begin{align*} \varphi_{X} (t) =& E \left( e^{i t X} \right) \\ =& E \left( e^{i (- i T) X} \right) \\ =& E \left( e^{T X} \right) \\ =& M(T) \end{align*} $$ のように $T$ に対するモーメント生成関数となる。特性関数はmgfとほぼ同じものと見なしても構わない。
一方、数学全般で特性characteristicという表現が非常に多く使われるが、確率論を勉強する立場では「私たちの特性関数が本物だ」という自負心を持っても良いと思う。少なくともGoogleで検索したときに最上位に表示されるのは確率論での特性関数だ。他の分野で「特性」は主に比較的難しい問題があるときにそれを $n$ 次方程式に変えてその「特徴」だけを残して研究しようとする表現だが、当然その方程式自体に関心を持つことはない。もちろん $\varphi_{X}$ も通常は $X$ の分布を研究するために使うが、他の分野に比べてはるかに頻繁に、重要に扱われるのは事実だ。
関連リンク
- フーリエ変換: 形式的には、特性関数は確率密度関数のフーリエ逆変換と同じ。
Capinski. (1999). Measure, Integral and Probability: p116. ↩︎