群における単位元と逆元の一意性の証明
定理 1
群 $\left<G, \ast \right>$において、$G$の全ての要素$x$に対して$e \ast x = x \ast e = x$を満たす単位元$e$は唯一である。$G$の任意の要素$a$に対して$a \ast {a’} = {a’} \ast a = e$を満たす逆元$a '$も$a$に対して唯一である。
説明
当たり前と思われがちだが、群の定義ではそれらの存在性のみが言及されており、その唯一性については証明が必要である。
証明
戦略:唯一性を証明する際にいつものように、背理法が用いられる。
パート1. 単位元
単位元が$e$だけではなく、$e'$も存在すると仮定してみよう。まず$e$は単位元であるから、 $$ e \ast\ e' = e' \ast\ e = e' $$ が成り立つ。一方、$e'$も単位元であるから、 $$ e' \ast\ e = e \ast\ e' = e $$ が成り立つ。つまり$e = e'$であるから、仮定$e \ne e'$と矛盾する。
パート2. 逆元
逆も同じように、$a$の逆元$a '$とは別の新たな逆元$a’’$が存在すると仮定してみよう。すると$a’ \ast\ a = e$であり、$a’’ \ast\ a = e$であるから、$a’ \ast\ a = a’’ \ast\ a$が成り立つ。
左右簡約則:群 $\left<G, \ast \right>$の要素$a,b,c$に対して、 $$ a \ast b = a \ast c \implies b = c \\ b \ast a = c \ast a \implies b=c $$
簡約則により、$a’ \ast\ a = a’’ \ast\ a$ならば$a’ = a’’$である。
これは仮定$a’ \ne a’’$と矛盾する。
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Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p32, 42. ↩︎