ガウス環のノルム
📂整数論ガウス環のノルム
定理
ガウシアン環 Z[i]について、N:Z[i]→Zという関数を考えよう。
- [1]: N(x+iy):=x2+y2と定義された場合、NはZ[i]の乗法的ノルムになる。
説明
ガウス整数は、[抽象代数](../../categories/abstract algebra)の助けを借りれば、はるかに快適に研究できる。整域で定義されるノルムNで**2**を証明すると、EDがUFDであるため、ガウス素数に拡張された算術の基本定理を証明することとほぼ等しい。これは、代数的に算術の基本定理をZがUFDであると説明するのと似ている。
証明
[1]
乗法的ノルムの定義:
- (i): N(α)=0⟺α=0
- (ii): N(αβ)=N(α)N(β)
Nが乗法的ノルムになり、Z[i]が実際にIDになることを示す必要がある。ノルムを定義するための定理は必要ないので、最初にIDであることを示す必要はない。a,b,c,d∈Zをα:=a+ib、β:=c+idとしてみよう。
パート (i). N(α)=0⟺α=0
N(α)=a2+b2=0⟺a=b=0⟺α=a+ib=0
パート (ii). N(αβ)=N(α)N(β)
ガウス整数同士の積は(a+ib)(c+id)=(ac−bd)+i(ad+bc)のように計算されるので、
N(αβ)====N(ac−bd+i(ad+bc))a2c2+a2d2+b2c2+b2d2(a2+c2)(b2+d2)N(α)N(β)
パート 3.Z[i] は ID である
αとβが0∈Z[i]ではないがαβ=0だと仮定する。するとパート (i)、(ii) により、
N(α)N(β)=N(αβ)=N(0)=0
N(α)とN(β)は整域Zの要素なので、N(α)N(β)=0を満たすためには、N(α)またはN(β)のいずれかが0でなければならないが、これは仮定に矛盾するので、Z[i]も整域である。
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ユークリッドノルムの定義:
- (i): すべてのa,b∈D(b=0)に対して、a=bq+rを満たすqとrが存在する。このとき、r=0またはν(r)<ν(b)のいずれかでなければならない。
- (ii): すべてのa,b∈D(b=0)に対して、ν(a)≤ν(ab)
ν:=Nとし、NがZ[i]のユークリッドノルムになることを示せばよい。β=0とする。
パート (i). ∃σ,ρ:α=βσ+ρ
あるr,s∈Qに対してβα=r+isとする。このr,sにできるだけ近い整数q1,q2∈Zに対して、σとρを次のように設定しよう。
σ:=q1+iq2ρ:=α−βσ
- ケース1. ρ=0
α=βσであるため、これ以上示す必要はない。σ=βα=q1+iq2とρ=0を見つけた。
- ケース2. N(ρ)<N(β)
q1とq2の定義によると、
∣r−q1∣≤21∣s−q2∣≤21
これにより、
N(βα−σ)==≤=N[(r+is)−(q1+iq2)]N[(r−q1)+i(s−q2)](21)2+(21)221
したがって、
N(ρ)===≤≤N(α−βσ)N(β(βα−σ))N(β)N(βα−σ)N(β)21N(β)
故に、ρ=0かN(ρ)≤N(β)を満たすようなρ、σが存在することが保証できる。
パート (ii). N(α)≥N(α)N(β)
β=0⟹N(β)≥1であるため、
N(α)≤≤=N(α)⋅1N(α)N(β)N(αβ)
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乗法的ノルムの性質により、u∈Z[i]が単位元であれば、∣N(u)∣=1であるため、対偶法により、∣N(u)∣=1が真でなければ、uは単位元でない。u:=x+iyに対してN(u)=x2+y2=1を満たすのは、u∈{1,−1,i,−i}の場合のみである。
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