ステップ関数とパルス関数
定義 1
- 以下のように定義された$S_{t}^{(T)}$をステップ関数という。 $$ S_{t}^{(T)} := \begin{cases} 1 & , t \le T \\ 0 & , \text{otherwise} \end{cases} $$
- 以下のように定義された$P_{t}^{(T)}$をパルス関数という。 $$ \begin{align*} P_{t}^{(T)} :=& \nabla S_{t}^{(T)} \\ =& S_{t}^{(T)} - S_{t-1}^{(T)} \end{align*} $$
説明
ステップ関数とパルス関数は、介入分析で使われる数式を表すのに役立つ関数で、それ自体の性質は特に意味がない。ステップ関数は、グラフの形が階段のように見えることから付けられた名前であり、パルス関数は、グラフで短い瞬間の衝撃を表す。[ 注: このような形と概念が数理物理学でも現れる点が面白い。]
介入分析のフォーム$Y_{t} = m_{t} + N_{t}$で介入する項$m_{t}$は、これらの関数で表現できる。ある時点$T$を基準に分析が大きく変わる場合、ステップ関数を使ったり、一つの例外だけを処理するためにパルス関数を使うことができる。例えば、以下のようになる。 $$ m_{t} = \omega S_{t}^{(T)} $$
$$ m_{t} = \omega P_{t}^{(T)} $$ ここで、$\omega$は係数だ。ステップ関数とパルス関数は関数値が$0$か$1$なので、このような修正が必要だ。$m_{t}$は思ったより自由に使える。例えば、$m_{t}$自体が何らかのARIMAモデルに従っていると仮定できる。次は、$ARMA(1,1)$を連想させる形をしている。 $$ m_{t} = \delta m_{t-1} + \omega P_{t-1}^{(T)} $$ 同様に、$\delta$は係数だ。この表現が面白いのは、バックシフト$B$を使うことで、次のような数式操作ができるからだ。 $$ \begin{align*} m_{t} =& \delta m_{t-1} + \omega P_{t-1}^{(T)} \\ =& \delta B m_{t} + \omega B P_{t}^{(T)} \end{align*} $$ $\delta B m_{t}$を左辺に移すと、 $$ m_{t} - \delta B m_{t} = \omega B P_{t}^{(T)} $$ 両辺を$(1-\delta B)$で割ると、 $$ m_{t} = {{\omega B} \over {1-\delta B}} P_{t}^{(T)} $$ つまり、$m_{t}$が非常に複雑ではないならば、$m_{t} = {{\omega ( B) } \over { \delta (B) }} P_{t}^{(T)}$のようなきれいな形で表現できるということだ。この方法で、次のような便利な関係式 $$ S_{t}^{(T)} = {{1} \over {1 - B}} P_{t}^{(T)} $$ も得ることができ、もっと自由に数式を展開できる。実際の分析で本当に使うことはあまりないが、少なくとも介入分析での$m_{t}$が、このような方式と形で求められることを理解しておく必要がある。
Cryer. (2008). Time Series Analysis: With Applications in R(2nd Edition): p250~251. ↩︎