ノルム空間とは何か
📂バナッハ空間ノルム空間とは何か
定義
Xをベクター空間としよう。次の三条件を満たす関数∥⋅∥:X→Rが存在すれば、∥⋅∥をXのノルムと呼び、(X,∥⋅∥)をノルム空間と呼ぶ。
(a) ∥x∥≥0,∀ x∈Xかつ∥x∥=0⟺x=0
(b) ∥cx∥=∣c∣∥x∥,∀ x∈X, ∀ c∈C
(c) ∥x+y∥≤∥x∥+∥y∥,∀ x,y∈X
説明
ノルム空間Xのノルムは以下のように表される。
∥x∥X,∥x,X∥,∥x;X∥
(a) ∥x∥=0⟺x=0の条件がない場合は、セミノルムになる。
(b) は∥x−y∥=∥y−x∥が成立するという意味である。
(c) を三角不等式と呼び、以下の不等式を逆三角不等式と呼ぶ。ノルム空間(X,∥⋅∥)とx,y∈Xに対して、以下の不等式が成立する。
∣∥x∥−∥y∥ ∣≤∥x−y∥
ノルムは連続写像である。
ノルム空間としての距離空間、位相空間
ノルムが与えられると、以下のように自然に距離を定義できる。したがって、ノルム空間は距離空間になる。
d(x,y)=dX(x,y)=∥x−y∥X
距離が与えられると、以下のようにオープンボールを定義できる。
Bd(x,r)=Br(x):={y∈X : ∥x−y∥X<r}
全てのオープンボールの集合はX上の(位相数学での)基底になる。つまり、Xのノルムで定義されたオープンボールによってX上の位相を作ることができるということである。このようにして作られた位相をX上のノルム位相と呼ぶ。さらに、位相ベクター空間Xの位相がノルム位相ならば、Xをノルマブルと呼ぶ。
以上の内容をまとめると、Xがノルム空間であるということは、Xがベクター空間であり、距離空間であり、位相空間であるという意味を全て含んでいるということである。したがって、関数解析学では与えられたノルム空間を自然に距離空間、位相空間としても扱う。
証明
三角不等式により、
∥x∥=∣(x−y)+y∣≤∣x−y∣+∥y∥
が成立する。したがって、
∥x∥−∥y∥≤∥x−y∥
同様に、
∥y∥=∣(y−x)+x∣≤∥y−x∥+∥x∥
なので、
∥y∥−∥x∥≤∥y−x∥=∥x−y∥
が成立する。したがって、(1),(2)により、
∣ ∥x∥−∥y∥ ∣≤∥x−y∥
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