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ホップ-ラックス公式がハミルトン-ヤコビ方程式を満たすことの証明 📂偏微分方程式

ホップ-ラックス公式がハミルトン-ヤコビ方程式を満たすことの証明

定理 1

ホップ-ラックスの公式

$$ u(x,t) = \min \limits_{y \in \mathbb{R}^n} \left\{ tL\left( \dfrac{x-y}{t} \right) +g(y) \right\} $$

$x \in \mathbb{R}^n$と$t>0$としよう。そして、ホップ-ラックスの公式によって定義された$u$が点$(x,t)$で微分可能だとする。そうすると、$u$はハミルトン-ヤコビ方程式を満たす。

$$ u_{t}(x, t) + H\big( Du(x, t) \big) =0 $$

証明

補助定理:ホップ-ラックスの公式の一般化

$t>0$としよう。すると、任意の$x \in \mathbb{R}^n$と$0< s< t$に対して次が成立する。

$$ u(x, t) = \min \limits_{y \in \mathbb{R}^n} \left\{ (t-s) L \left( \dfrac{x-y}{t-s} \right) +u(y, s) \right\} $$

$s=0$の時、ホップ-ラックスの公式と同じである。

  • Part 1.

    固定された$v \in \mathbb{R}^n$と$h>0$が与えられたとする。すると補助定理により次が成り立つ。

    $$ \begin{align*} u(x+hv, t+h) &= \min \limits_{y \in \mathbb{R}^n} \left\{ hL\left( \dfrac{x+hv-y}{h} \right) +u(y, t) \right\} \\ & \le hL(v)+u(x, t) \end{align*} $$

    補助定理の公式で$t$の代わりに$t+h$を、$s$の代わりに$t$を入れたものだ。不等式が成立するのは、全ての$y \in \mathbb{R}^n$に対して最小値なので、任意の$x$を$y$の場所に代入しても、その値は当然同じか大きいからである。右辺の$u$を移項して$h$で割ると、次を得る。

    $$ \dfrac{u(x+hv, t+h)-u(x, t)}{h} \le L(v) $$

    この時、左辺は以下の式に置き換えることができる。

    $$ \dfrac{ u\big( (x, t)+h(v, 1) \big) -u(x, t) }{h} $$

    微分するための形に変えたものだ。$h^+ \rightarrow 0$になる極限を取ると、次を得る。

    $$ \begin{align} && (v, 1) \cdot \big( Du(x, t), u_{t}(x, t) \big) &\le L(v) \nonumber \\ \implies && v\cdot Du(x, t)+ u_{t}(x, t) &\le L(v) \nonumber \\ \implies && u_{t}(x, t) + v\cdot Du(x, t)- L(v) &\le 0 \label{eq1} \end{align} $$

    この時、上の式は全ての$v \in \mathbb{R}^n$に対して成り立ち、$H(p)=L^{\ast}(p)=\max\limits_{v \in \mathbb{R}^n} \left\{ p\cdot v-L(v) \right\}$なので、$\eqref{eq1}$によって次が成り立つ。

    $$ u_{t}(x, t) + H\big( Du(x, t) \big) = u_{t}(x, t)+\max_{v \in \mathbb{R}^n} \left\{ v \cdot Du(x, t)-L(v) \right\} \le 0 $$

  • Part 2.

    ホップ-ラックスの公式によって、固定された$x$、$t$に対して次を満たす$z=z_{z, t} \in \mathbb{R}^n$が存在する。

    $$ \begin{equation} u(x, t)=tL\left( \dfrac{x-z}{t} \right) + g(z) \label{eq2} \end{equation} $$

    全ての$y$の中で最小値となるような$y$を$z$としたものだ。そして、固定された$0 < h <t$があるとし、$s=t-h$、$y=\dfrac{s}{t}x+\left( 1-\dfrac{s}{t} \right)z$としよう。すると、以下の式が成り立つ。

    $$ \begin{equation} 0<s<t, \quad 0<\dfrac{s}{t}<1, \quad \dfrac{x-z}{t}=\dfrac{y-z}{s} \label{eq3} \end{equation} $$

    すると

    $$ \begin{align*} u(x, t)-u(y, s) & \ge tL\left( \dfrac{x-z}{t} \right) +g(z) -\left[ sL\left(\frac{y-z}{s}\right) + g(z) \right] \\ &= (t-s)L\left( \dfrac{x-z}{t} \right) \end{align*} $$

    最初の行は$\eqref{eq2}$とホップ-ラックスの公式によって成り立ち、二番目の行は$\eqref{eq3}$によって成り立つ。この時、$s=t-h$なので、次が成り立つ。

    $$ y=\dfrac{s}{t}x+\left( 1-\dfrac{s}{t} \right)z=\left( 1-\dfrac{h}{t}\right )x + \dfrac{h}{t}z $$

    従って、上の不等式は以下のようになる。

    $$ \begin{align*} u(x, t)-u(y, s) &= u(x, t)-u\bigg( \left( 1-\dfrac{h}{t}\right )x + \dfrac{h}{t}z, t-h \bigg) \\ & \ge & hL\left(\dfrac{x-z}{t}\right) =(t-s)L\left( \dfrac{x-z}{t} \right) \end{align*} $$

    両辺を$h$で割り、左辺の分子、分母に$-1$を掛けて微分するための形に整理すると、以下のようになる。

    $$ \dfrac{ u\left( (x, t)-h\left( \dfrac{x-z}{t}, 1 \right) \right) - u(x, t) }{-h} \ge L\left(\dfrac{x-z}{t}\right) $$

    上の不等式に$h \rightarrow 0^+$の極限を取ると、以下のようになる。

    $$ \begin{align} &&\left( \dfrac{x-z}{t}, 1 \right) \cdot \left( Du(x, t), u_{t}(x, t) \right) = \dfrac{x-z}{t}\cdot Du(x, t) + u_{t}(x, t) &\ge L\left( \dfrac{x-z}{t} \right) \nonumber \\ \implies && \dfrac{x-z}{t}\cdot Du(x, t) + u_{t}(x, t) - L\left( \dfrac{x-z}{t} \right) &\ge 0 \label{eq4} \end{align} $$

    従って、次が成り立つ。

    $$ \begin{align*} u_{t}(x, t)+H(Du) &= u_{t}(x, t)+\max_{v \in \mathbb{R}^n} \left\{ v \cdot Du(x, t)-L(v) \right\} \\ &\ge u_{t}(x, t)+\dfrac{x-z}{t}\cdot Du(x, t)-L\left( \dfrac{x-z}{t} \right) \\ & \ge 0 \end{align*} $$

    二番目の行は$v=\dfrac{x-z}{t}$を選ぶと成り立ち、最後の行は$\eqref{eq4}$によって成り立つ。

**Part 1.Part 2.**により、次が成立する。

$$ u(x, t) = \min \limits_{y \in \mathbb{R}^n} \left\{ (t-s) L \left( \dfrac{x-y}{t-s} \right) +u(y, s) \right\} $$


  1. Lawrence C. Evans, Partial Differential Equations (2nd Edition, 2010), p127-128 ↩︎