任意の関数を二つの非負の関数として表す方法
定義1
関数$f : X \to \mathbb{R}$に対して$f^{+}$と$f^{-}$を以下のように定義しよう。
$$ \begin{align*} f^{+} (x) &:= \max \left\{ f(x),\ 0 \right\} \\ f^{-} (x) &:= \max \left\{ -f(x),\ 0 \right\} \end{align*} $$
$f^{+}$を$f$の正の部分positive partといい、$f^{-}$を$f$の負の部分negative partという。
説明
名前のせいで混乱するかもしれないが、$f^{+}$と$f^{-}$は両方とも非負non negativeの関数だ。これらがなぜ正の部分や負の部分と呼ばれるのか、定義だけではピンとこないかもしれない。以下の図を見よう。
図を見ればわかるが、正の部分$f^{+}$は正確に$f$の値が正の部分を表し、$f^{-}$は$f$の値が負の部分を(正として)表す。上の定義により、以下の式が成り立つことは簡単にわかる。
$$ f=f^{+} -f^{-},\quad |f|=f^{+}+f^{-} $$
$$ \begin{array}{c} f^{+}=\frac{1}{2}(|f| + f),\quad f^{-}=\frac{1}{2}(|f|-f) \end{array} $$
定理
(1)
三つの関数$f,g,h : X \to \mathbb{R}$が以下の条件を満たすとする。
$$ f(x)=g(x)-h(x), \quad \min \left\{ g(x),\ h(x) \right\} \ge 0\ \quad \forall\ x \in X $$
すると、次の式が成り立つ。
$$ f^{+} (x) \le g(x), \quad f^{-} (x) \le h(x) \quad \forall\ x \in X $$
任意の関数を非負の二つの関数の差として表すとき、$f$の正の部分$f^{+}$と$f$の負の部分$f^{-}$がそれを満たす最小の関数となるという意味だ。
(2)
$f$が可測関数ならば、$f^{\pm}$も可測である。
証明
(1)
任意の$x$に対して$ f(x)=g(x)-h(x)$であり、$h(x) \ge 0$なので$f(x) \le g(x)$である。また、仮定により$0 \le g(x)$である。$g(x)$が$f(x)$と$0$の両方よりも大きいか等しいため、二つのうち大きい方よりも大きいか等しい。したがって、次が成り立つ。
$$ f^{+}(x) = \max \left\{ f(x), 0 \right\} \le g(x) $$
任意の$x$に対して$-f(x)=h(x)-g(x)$であり、$g(x) \ge 0$なので$-f(x) \le h(x)$である。また、仮定により$0 \le h(x)$である。$h(x)$が$-f(x)$と$0$の両方よりも大きいか等しいため、二つのうち大きい方よりも大きいか等しい。したがって、次が成り立つ。
$$ f^{-}(x) = \max \left\{ -f(x), 0 \right\} \le h(x) $$
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参照
Robert G. Bartle, The Elements of Integration and Lebesgue Measure (1995), p10 ↩︎