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オイラー定数eは無理数である 📂解析学

オイラー定数eは無理数である

定理

$\mathbb{Q}$ は有理数の集合を表す。

証明

マクローリン展開を使用して1

戦略: マクローリン展開を使って$e^{-1}$を二つの部分に分け、矛盾を導出する。マクローリン展開が必要なため、高等学校のカリキュラム内では証明できない。


$\mathbb{N}$ は自然数の集合、$\mathbb{Z}$ は整数の集合を表す。

  • パート1. $x_{1} = x_{2}$

    $e \in \mathbb{Q}$ と仮定すると、オイラー定数 $e$ は何らかの $a,b \in \mathbb{N}$ に対して $e = {{ a } \over {b}}$ のように表せるべきだ。指数関数のマクローリン展開によって

    $$ e^{-1} = {{ b } \over { a }} = \sum_{k=0}^{\infty} {{ (-1)^{k} } \over { k! }} $$

    両辺に $(-1)^{a+1} a!$ を掛けて、位置を入れ替えると

    $$ \sum_{k=0}^{\infty} {{ (-1)^{k + a + 1} a! } \over { k! }} = b (-1)^{a+1} ( a - 1 )! $$

    左辺のシグマが $k=a+1$ から始まるなら、右辺では $\sum_{k=1}^{a} {{ (-1)^{k + a + 1} a! } \over { k! }}$ が抜けているため $$ \sum_{k=a+1}^{\infty} {{ (-1)^{k + a + 1} a! } \over { k! }} = b (-1)^{a+1} ( a - 1 )! - \sum_{k=1}^{a} {{ (-1)^{k + a + 1} a! } \over { k! }} $$ ここで、左辺を $x_{1}$、右辺を $x_{2}$ とすると、確かに $x_{1} = x_{2}$ になるはずだ。 $$ x_{1} := \sum_{k=a+1}^{\infty} {{ (-1)^{k + a + 1} a! } \over { k! }} $$

    $$ x_{2} := b (-1)^{a+1} ( a - 1 )! - \sum_{k=1}^{a} {{ (-1)^{k + a + 1} a! } \over { k! }} $$

  • パート2. $x_{1} \in (0,1)$

    $x_{1}$ を直接展開すると

    $$ x_{1} = {{ 1 } \over { a+1 }} - {{ 1 } \over { (a+1)(a+2) }} + {{ 1 } \over { (a+1)(a+2)(a+3) }} - \cdots $$ $k$ が大きくなるほど、$\left| (-1)^{k+a+1} {{ a! } \over { k! }} \right|$ は小さくなるので、$x_{1}$ は ${{ 1 } \over { a+1 }}$ より大きく、${{ 1 } \over { a+1 }} - {{ 1 } \over { (a+1)(a+2) }}$ より小さい必要がある。したがって、$x_{1}$ は $0$ と $1$ の間の何らかの数でなければならない。

  • パート3. $x_{2} \in \mathbb{Z}$

    $k \le a$ならば、${{ a! } \over { k! }}$ は自然数で、簡単化すると

    $$ x_{1} \in (0,1) $$

    $$ x_{2} \in \mathbb{Z} $$

    しかし、$(0,1) \cap \mathbb{Z} = \emptyset$ であるため、$x_{1} \ne x_{2}$ となるが、パート1で断固として $x_{1} = x_{2}$ であったため、矛盾が生じる。

$e$ の定義を使用して2

オイラー定数の定義

$$ e: = \sum \limits_{n=0}^{\infty} \dfrac{1}{n!} $$

$s_{n}$ を$e$の部分和とすると、$e$ の定義により以下のようになる。

$$ \begin{align*} e - s_{n} =& \dfrac{1}{(n+1)!} + \dfrac{1}{(n+2)!} + \dfrac{1}{(n+3)!} + \cdots \\ &< \dfrac{1}{(n+1)!} + \dfrac{1}{(n+1)!(n+1)} + \dfrac{1}{(n+1)!(n+1)^{2}} + \cdots \\ =& \dfrac{1}{(n+1)!}\left( 1 + \dfrac{1}{(n+1)} + \dfrac{1}{(n+1)^{2}} + \cdots\right) \\ =& \dfrac{1}{(n+1)!}\left( \dfrac{n+1}{n} \right) \\ =& \dfrac{1}{n! n} \end{align*} $$

今、$e$が有理数だと仮定しよう。すると、$e=\dfrac{p}{q}$を満たす正の整数 $p, q$ が存在し、上の式によって以下が成立する。

$$ 0 < q!(e - s_{q}) < \dfrac{1}{q} $$

仮定により、$q!e=(q-1)!p$ は整数だ。また、

$$ q! s_{q} = q! \left( 1 + 1 + \dfrac{1}{2!} + \cdots + \dfrac{1}{q!} \right) $$

なので、$q!s_{q}$ も整数だ。したがって、$q!(e-s_{q})$ は整数であるが、$q\ge 1$ であるため、$q!(e-s_{q})$ は $0$ と $1$ の間の整数となる。これは矛盾であるため、仮定は間違っており、背理法により、$e$ は無理数である。

関連項目


  1. William R. Wade, An Introduction to Analysis (4th Edition, 2010), p263-264 ↩︎

  2. ウォルター・ルーディン、数理解析の原理 (第3版, 1976), p65 ↩︎