多次元線形写像
📂動力学多次元線形写像
定義
- マップ TA:Rm→Rm が全ての a,b∈R と x,y∈Rm に対して
TA(ax+by)=aTA(x)+bTA(y)
を満たすならば、TA は 線形linearという。
A の固有値を λ1,⋯,λm としよう。
- ∣λ1∣=1,⋯,∣λm∣=1 ならば、A は 双曲線的hyperbolicである。
- 双曲線的な A について、{∣λi∣>1∣λj∣<1 を満たす i,j が少なくとも一つ存在するなら、0 は サドルであるという。
説明
実際に、マップ TA に対応する m×m サイズの行列 A は A(ax+by)=aAx+bAy を満たす。本質的に TA と A は同じなので、区別する必要はなく、A 自体をマップと呼んでも問題ない。
一方で、このような線形マップで原点 0 は A0=0 を満たすため、TA の不動点となる。不動点が出現したので、当然それについての議論も行われる。
サドルでない時の判定法
0 がサドルでない場合、次の定理に従って、シンクまたはソースであるかを判断できる。
- [1]: ∣λ1∣<1,⋯,∣λm∣<1 ならば、0 はシンクである。
- [2]: ∣λ1∣>1,⋯,∣λm∣>1 ならば、0 はソースである。
例
双曲線的な線形マップの例として、R2 から A:=[1/2002] を考えると、固有値は λ1=1/2,λ2=2 になる。平面上の初期点 v0=(x,y) が与えられた場合、マップ vn+1:=Avn を適用するごとに x の値は小さくなり、y の値は大きくなるだろう。特に、原点はサドルになる。

y=x1 は典型的な双曲線であり、その形を見れば、なぜこのようなマップを双曲線的と呼ぶのかがわかるだろう。もちろん、形にとらわれる必要はなく、双曲線的という表現はそれよりもはるかに大きな概念である。
原点がシンクになる線形マップの例として、R2 から B:=[1/2001/2] を考えると、固有値は λ1=1/2,λ2=1/2 であり、平面上の全ての点はマップを適用するたびに原点に近づく。逆に、C:=[2002] のような線形マップでは、0 を除く全ての点はマップを適用するたびに原点から離れ、ソースになる。