logo

多次元線形写像 📂動力学

多次元線形写像

定義 1

  1. マップ TA:RmRmT_{A} : \mathbb{R}^{m} \to \mathbb{R}^{m} が全ての a,bRa,b \in \mathbb{R}x,yRm\mathbf{x}, \mathbf{y} \in \mathbb{R}^{m} に対して TA(ax+by)=aTA(x)+bTA(y) T_{A} ( a \mathbf{x} + b \mathbf{y} ) = a T_{A} ( \mathbf{x} ) + b T_{A} ( \mathbf{y} ) を満たすならば、TAT_{A}線形linearという。

AA固有値λ1,,λm\lambda_{1} , \cdots , \lambda_{m} としよう。

  1. λ11,,λm1| \lambda_{1} | \ne 1, \cdots , | \lambda_{m} | \ne 1 ならば、AA双曲線的hyperbolicである。
  2. 双曲線的な AA について、{λi>1λj<1\begin{cases} | \lambda_{i} | >1 \\ | \lambda_{j} | <1 \end{cases} を満たす i,ji,j が少なくとも一つ存在するなら、0\mathbb{0}サドルであるという。

説明

実際に、マップ TAT_{A} に対応する m×mm \times m サイズの行列 AAA(ax+by)=aAx+bAy\displaystyle A ( a \mathbf{x} + b \mathbf{y} ) = a A \mathbf{x} + b A \mathbf{y} を満たす。本質的に TAT_{A}AA は同じなので、区別する必要はなく、AA 自体をマップと呼んでも問題ない。

一方で、このような線形マップで原点 0\mathbb{0}A0=0A \mathbb{0} = \mathbb{0} を満たすため、TAT_{A} の不動点となる。不動点が出現したので、当然それについての議論も行われる。

サドルでない時の判定法

0\mathbb{0} がサドルでない場合、次の定理に従って、シンクまたはソースであるかを判断できる。

  • [1]: λ1<1,,λm<1| \lambda_{1} | < 1, \cdots , | \lambda_{m} | < 1 ならば、0\mathbb{0} はシンクである。
  • [2]: λ1>1,,λm>1| \lambda_{1} | > 1, \cdots , | \lambda_{m} | > 1 ならば、0\mathbb{0} はソースである。

双曲線的な線形マップの例として、R2\mathbb{R}^2 から A:=[1/2002]A:= \begin{bmatrix} 1/2 & 0 \\ 0 & 2 \end{bmatrix} を考えると、固有値λ1=1/2,λ2=2\lambda_{1} = 1/2, \lambda_{2} = 2 になる。平面上の初期点 v0=(x,y)\mathbf{v}_{0} = (x,y) が与えられた場合、マップ vn+1:=Avn\mathbf{v}_{n+1} := A \mathbf{v}_{n} を適用するごとに xx の値は小さくなり、yy の値は大きくなるだろう。特に、原点はサドルになる。

20190418\_145220.png

y=1x\displaystyle y = {{ 1 } \over { x }} は典型的な双曲線であり、その形を見れば、なぜこのようなマップを双曲線的と呼ぶのかがわかるだろう。もちろん、形にとらわれる必要はなく、双曲線的という表現はそれよりもはるかに大きな概念である。

原点がシンクになる線形マップの例として、R2\mathbb{R}^2 から B:=[1/2001/2]B:= \begin{bmatrix} 1/2 & 0 \\ 0 & 1/2 \end{bmatrix} を考えると、固有値λ1=1/2,λ2=1/2\lambda_{1} = 1/2, \lambda_{2} = 1/2 であり、平面上の全ての点はマップを適用するたびに原点に近づく。逆に、C:=[2002]C:= \begin{bmatrix} 2 & 0 \\ 0 & 2 \end{bmatrix} のような線形マップでは、0\mathbb{0} を除く全ての点はマップを適用するたびに原点から離れ、ソースになる。


  1. Yorke. (1996). CHAOS: An Introduction to Dynamical Systems: p62, 68. ↩︎