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物理学におけるテンソルとは 📂数理物理学

物理学におけるテンソルとは

概要

  • 断然この記事は、テンソルが何か分からなくてこのページにたどり着いた物理学部の学生に最も分かりやすいテンソルについての説明だから、是非読むことをお勧めする。

  • 数学的に間違っている部分に対する指摘は受け付けない。負の数を習っていない人に対して「小さい数から大きい数を引くことはできない」、虚数を習っていない人に対して「ルートの中に負の数は入れられない」と教えることは、間違った内容を教えるわけではないからだ。この文章の目的は、テンソルの正確な定義を教えることではなく、テンソルを理解するために不必要に時間を浪費しないようにすることだ。

物理学を学んでいくと、学年が上がるにつれてテンソルtensorというものに出会うようになる。私が最初に見たテンソルは、力学で出てきた慣性モーメントテンソルmoment of inertia tensorだ。

I=I=(IxxIxyIxzIyxIyyIyzIzxIzyIzz) \mathbf{I} =\overleftrightarrow{\mathbf{I}}= \begin{pmatrix} I_{xx} & I_{xy} & I_{xz} \\ I_{yx} & I_{yy} & I_{yz} \\ I_{zx} & I_{zy} &I_{zz} \end{pmatrix}

当時、大学2年生だった私には、これが何なのか理解することが不可能だった。様々な本を探したりインターネットで検索しても、テンソルが何なのか分かりにくかった1。テンソルの概念を正確に理解するために必要な知識が不足しているにも関わらず、無理に理解しようとしたからだ。私は物理に興味があるだけでなく、数学にも興味があったので、テンソルの正確な定義や意味も知らずに使ったり受け入れたりすることはできなかった。しかし、間違いなくこれは物理を学ぶ上で良い態度ではない。

テンソルの数学的な定義を受け入れて理解することは可能だが、それには線形代数学に関する深い知識が必要だ2。これは、学部の物理学を学ぶのに必要な数学をはるかに超える。数学を学ぶことは物理学を学ぶ上で大いに役立つが、この場合はやりすぎだということだ。数学的にテンソルを理解しようとすると、力学の中間試験を台無しにすることになるだろう。 だから、物理学部の学生は、テンソルがどのようなものか**「感覚的に」**知ることが重要だ。様々な例を見て、なぜ必要で、どのように、どのような時に使うかを学ぶので十分だ。物理の多くの部分で数学を大まかに使っているが、その理由は数学的な厳密さが保証されているからだ。テンソルもそのような厳密さが保証されているので、学部の物理を勉強する人はそのような厳密さを追う必要がない。

テンソルという概念は、スカラーやベクトルだけでは表現できない物理量が存在するために生まれたと考えればいい。実際、テンソルさえあればすべての物理量を表現することができるので、テンソルはスカラーとベクターを含む一般的な概念だ。だから、スカラーやベクトルと言わずにテンソルだけを使ってもいい。しかし、そうすることは非効率的で、物理を初めて学ぶときには全く役に立たないので、スカラーやベクターであるテンソルは特にテンソルとは呼ばない。学部の物理学では、よく3×33\times 3行列で表されるものをテンソルと言う。長い記事を読むのが嫌いで、分からない場合でも、「3x3の行列をテンソルと呼ぶのかな」と思っても問題ない。学部の範囲では、間違った説明ではないからだ。

テンソルの分類

一般的に(m,n)(m,n)-テンソルまたは(mn)\binom{m}{n}テンソルと表示される。ここで、mmは空間の次元を意味し、nnはテンソルの成分に付ける下付き添字の数だと考えるとよい。この時、テンソルの成分の数はmnm^{n}個だ。相対論を除くほとんどの物理では、常に3次元空間を扱うので、常にm=3m=3だ。したがって、mmがいくつかを特に述べることなく、nnの値によって、テンソルを00階テンソル、11階テンソルなどと区別することもある。

00階テンソル=スカラー

00階テンソルは(30)\binom{3}{0}テンソルを意味し、これはスカラーと同じだ。00階テンソルの代表的な例として質量がある。3次元空間では、質量は単にmmで表記するので、下付き添字が0個であり、したがって00階テンソルだ。しかし、わざわざテンソルと言わずにスカラーと言う。成分の数は30=13^0=1個。

11階テンソル=ベクター

11階テンソルは(31)\binom{3}{1}テンソルを意味し、これはベクターと同じだ。11階テンソルの代表的な例として速度がある。3次元空間で速度はv=(vx,vy,vz)\mathbf{v}=(v_{x},v_{y},v_{z})で表記され、その成分に付いた下付き添字の数が1個であるため、11階テンソルだ。しかし、わざわざテンソルと言わずにベクターと言う。成分の数は31=33^1=3個。

22階テンソル

22階テンソルは(32)\binom{3}{2}テンソルを意味する。以下のような**3×33 \times 3行列**を考えてみよう。

A=(a11a12a13a21a22a23a31a32a33) A=\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix}

行列の成分はaija_{ij}で表され、下付き添字の数が2個であるため、22階テンソルだ。通常、学部の物理学の教科書では、3×33 \times 3行列が登場し、この時22階テンソルという表現よりも、テンソルという表現を多く使う。クロネッカーデルタ δij\delta_{ij}も下付き添字が2個あるため、22階テンソルだ。しかし、通常の教科書ではクロネッカーデルタをわざわざテンソルとは呼ばない。

δij={1ifi=j0ifij=(δ11δ12δ13δ21δ22δ23δ31δ32δ33)=(100010001) \begin{align*} \delta_{ij}&=\begin{cases} 1 & \mathrm{if} \quad i=j \\ 0 & \mathrm{if} \quad i\ne j \end{cases} \\ &= \begin{pmatrix} \delta_{11} & \delta_{12} & \delta_{13} \\ \delta_{21} & \delta_{22} &\delta_{23} \\ \delta_{31} &\delta_{32} &\delta_{33} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \end{align*}

成分の数は32=93^2=9個だ。

33階テンソル

代表的な例としては、レヴィチヴィタ記号Levi-Civita symbolがある。

ϵijk={1ifijk=123=231=3121ifijk=132=213=3210ifi=j or j=k or k=i \epsilon_{ijk}=\begin{cases} 1 & \mathrm{if} \quad ijk=123=231=312 \\ -1 & \mathrm{if} \quad ijk=132=213=321 \\ 0 & \mathrm{if} \quad i=j \ \mathrm{or}\ j=k\ \mathrm{or} \ k=i \end{cases}

下付き添字の数が3個であるため、33階テンソルだ。しかし、通常の教科書ではレヴィチヴィタ記号をわざわざテンソルとは呼ばない。成分の数は33=273^3=27個だ。

44階テンソル

この時点で、44階テンソルが下付き添字が4個の物理量を指す名前であることは理解できるが、学部の物理学では44階以上のテンソルは登場しない。


  1. Wikipediaでは、テンソルをできる限り一般的な概念として説明しているが、言い換えれば、できる限り難しく説明しているということだ。 ↩︎

  2. 一般的に数学科の2年生が学ぶ線形代数学のレベルでは、到底足りない。 ↩︎