logo

熱方程式, 拡散方程式 📂偏微分方程式

熱方程式, 拡散方程式

定義1 2

以下の偏微分方程式は、熱方程式heat equationまたは拡散方程式diffusion equationと呼ばれる。

$$ \dfrac{\partial u}{\partial t} = \dfrac{\partial^{2} u}{\partial x^{2}} $$

  • 空間座標が$n$次元の場合、 $$ \dfrac{\partial u}{\partial t} = \Delta u = \nabla^{2}u $$ ここで$\Delta = \nabla^{2} = \sum\limits_{i=1}^{n} \dfrac{\partial^{2} }{\partial x_{i}^{2}}$はラプラシアンを指す。

  • 外力forcing term$f = f(x,t)$がある場合、 $$ \dfrac{\partial u}{\partial t} = \dfrac{\partial^{2} u}{\partial x^{2}} + f $$

  • 拡散係数diffusion coefficient$a = a(x) > 0$がある場合、 $$ \dfrac{\partial u}{\partial t} = \dfrac{\partial }{\partial x} \left[ a(x) \dfrac{\partial u}{\partial x} \right] $$

初期条件と境界条件

熱方程式では、通常、初期条件と境界条件が与えられる。初期条件だけでは解が一意に決定されない。$u$が$\Omega \times [0, T]$で定義された関数だとすると、

$$ \text{initial condition : } u(x, 0) = g(x) \quad \text{ on } \Omega \times \left\{ 0 \right\} $$

$$ \text{boundary condition : } u(x, t) = h(x, t) \quad \text{ on } \partial \Omega \times [0, T] $$

$\partial \Omega$は$\Omega$の境界である。

説明

ラプラス方程式に時間に関する項が追加された形である。ラプラス方程式は時間の流れに無関係なので、平衡状態に関する方程式であり、熱方程式は時間の流れの影響を受けるので、何らかの物理量が流れる(拡散する)状態に関する方程式である。熱方程式という名前がついたのも、熱力学で初めて現れたからである。

導出

$U \subset \mathbb{R}^n$が開集合で、物理的な空間を意味するとする。$u:U\times (0,\ \infty) \to \mathbb{R}$をある物理量の密度関数とする。すると$u(x,\ t)$は、時刻$t>0$での点$x\in U$での密度を意味する。ある開集合$V$が$V \Subset U$であり$V\in C^{\infty}$を満たすとする。また、$\mathbf{F} : U \times (0, \infty) \to \mathbb{R}^n$を$u$のフラックスfluxとする。すると$u$と$\mathbf{F}$の間に次の式が成り立つ必要がある。

$$ \dfrac{d}{dt}\int_{V}u(x,t)dx = -\int_{\partial V}\mathbf{F}(x, t) \cdot \nu (x) dS(x) $$

左辺は、ある空間の内部で物理量$u$の変化量を述べており、右辺はその空間の境界で出入りした量を述べている。自ら生成されたり消えたりしない限り、その量は一定である。内部の物理量に変化があった場合、必ず入るものまたは出るものがあり、その両方の値は等しいということである。

簡単な例として、人々が自由に出入りできる部屋があるとしよう。部屋の中で人数の変化を数える観察者$A$がいる。ドアの前に立ち、出て行く人を見るたびに$+1$を、入ってくる人を見るたびに$-1$を数える観察者$B$がいる。もし3人が部屋から出た場合、部屋の中で$A$が測定した変化量は-3であり、ドアの前で$B$が数えた数は3である。右辺にマイナス符号が付いた理由はこれである。

$u \in C^{2}$であるため、左辺の微分を積分の内側に入れ、右辺にグリーンの定理を適用すると、次のようになる。

$$ \int_{V} u_{t}(x,t)dx=-\int_{V} \nabla \cdot \mathbf{F}(x,t)dx\quad \forall t>0 $$

したがって、次を得る。

$$ u_{t}=-\nabla \cdot \mathbf{F}\quad \mathrm{in}\ U\times(0,\infty) $$

ラプラス方程式を導いたときと同じように、$F$が$u$の勾配に比例する量であるとすると$\mathbf{F}=-aDu$であり、次を得る。

$$ u_{t}=-\nabla \cdot(-aDu)=a\nabla \cdot Du=a\Delta u $$

$a=1$とすると、熱方程式を得る。


  1. Lawrence C. Evans, Partial Differential Equations (2nd Edition, 2010), p44 ↩︎

  2. A. Iserles, A First Course in the Numerical Analysis of Differential Equations (2nd, 2009), p349-351 ↩︎